2018年現在 SE3P RX-8の相場について考える
2021/10/28
ロータリーエンジンを搭載したRX-7の後継として発売されたRX-8。ツインターボ、ハッチバッククーペから一転してNAの観音開き4ドアに。劇的な変化を遂げた…はずが様々な問題点が。そんな問題点やリスクも踏まえた上で相場について考えてみたいと思います。
目次
カーセンサー カー・オブ・ザ・イヤー 2018 2年連続で1位を受賞
2014年から続いているカーセンサーのこの企画。中古車市場でどの車種が人気を集めたかというわかりやすいものですが、今年も12月になり結果が発表されました。結果は2年連続でRX-8が1位を受賞という結果に。RX-8は過去5回の内、3回目の1位となり、その他の2回も2位という驚異的な結果を収めています。
この結果を見ると、どれだけ人気があるの!?と、誰もが思います。それだけ人気があれば価格の高騰も容易に想像ができる…はずが、実際に小売市場に目を向けると、驚くほど安価な車両でいっぱい。なんだこれは??
価格順に並べると、なんと!10万円を切る車両が!!!人気の国産スポーツカーのMT車が車両本体価格10万円以下、総額では20万円ほどで買える車両が見られます。違和感を感じましたか?それではこの企画の内容を再確認してみましょう。
カーセンサー カー・オブ・ザ・イヤーとは?
目的
独自のビッグデータから 中古車マーケットで一定以上の購入実現度を有するモデルを選出し、ユーザーの購入意欲の高さに着目してランキング化。1位を中古車市場の発展とユーザーのカーライフの充実に最も貢献した「イヤーカー」としその栄誉を称える
対象車種
2017年11月1日~2018年10月31日の1年間、カーセンサーnetに掲載のあったすべてのモデル
選考方法
・掲載総台数(カーセンサーnet)
・ユーザーからの問い合わせ総件数
・掲載1台当たりの問い合わせ集中率
以上の要素を独自のルールでポイント化し、ポイント数の高い順にランキングを作成
引用:カーセンサー
ようするに、掲載台数がそこそこで、それに対して問い合わせ件数とその集中率が高い車両が上位に来るというわけです。未だに世界的に大人気で価格もなかなか下がらない30プリウスが40位にいるのを見るとわかりますよね。つまり、この企画で上位に来る車が、必ずしも高性能で人気がある車と言うわけではなさそうです。データに嘘はありませんし、この選考方法であればこのような結果が出てもおかしくない、と私は思います。
RX-8の人気の理由
では、実際に何故これだけの人気があるのか、その理由は…
①スタイル・ビジュアル
②実用性
③価格帯
だと私は考えます。
誰が見てもかっこよく見えるこのスタイル。4ドアと言えど、リアドアを極限まで小さくした独特の観音開きのおかげで、見た目はまるで2ドアクーペのよう。それでいて、リアシートへの乗り降りのしやすさはもちろん、前後シートとも足下のスペースを確保しているため、大人4人乗車でも意外と快適な車内はスポーツカーとは思えないほど。無理せずドライブに出かけられます。その上、今となっては数少ないMT車が50万円以下で手に入るとあれば、人気が出て当然です。特に10〜20代の若者にはこれ以上ないと言っても過言ではないほどドンピシャ…って、こんなに美味しい話があるのでしょうか?いや、確かにここまでは嘘ではないのですが、この先が非常に重要なのです。
ロータリーエンジン搭載車両であることを忘れるな
前回RX-7のブログをアップしましたが、そこでエンジンの重要性についてはお伝えしたと思います。
私自身、ロータリーエンジンを長年に渡り乗ってきました。ここだけの話、1台目はエンジンブローをさせています。AE86からの乗り換えだったのですが、4AGというエンジンはレブを当てようが何をしようが、かなり乱暴に扱いましたが全然壊れませんでした。ちょっと言い過ぎかもしれませんが…笑 こんな雑な扱いをしていた人間がRX-7に乗り換えて、エンジンのことを甘く見ていたのは事実。周りの先輩方からは「甘く見るな」「温度管理、メンテナンスwしっかりしろ」「ブーストかけすぎるな」などと言われてきたのに、それを無視してヤンチャにドリフトを続けてきた結果、エンジンブロー。修理代30〜50万円(当時)と言われ、車のローンてんこ盛りで払えるわけないじゃん!ということで、借金作ったわけです。実際は車を直すのではなく、乗り換える方向でアクションを起こしました。
これを教訓に2台目以降のRX-7はエンジンにかなり気を使いました。暖機運転は当たり前、チョイノリを控えたり、エンジンオイルをワンランクアップさせ、プラグ・プラグコードの定期点検・交換、ブースト・水温・油温管理の徹底、パワーFCを入れて現車セッティング、レブは絶対に当てない…そして、意外とされていないことですが高回転までキッチリ回しカーボンを溜めない運転を心がけていました。そのおかげもあり、2〜5代目のRX-7は全てエンジンのコンディションを保つことができました。
では、こんな経験を基にスポーツカーの営業に携わってきたわけですが、お客様とお話をして驚くのなんの。RX-7オーナーとRX-8オーナーの考え方、感覚の違いは同じロータリーエンジンに乗っているとは思えないほどです。特にRX-8のベースグレードなどに乗っている方は、プリウスなどに乗っている感覚では!?と錯覚するほど。具体的に質問してみると…
いしてつ:エンジンオイルはいつ交換されました?
オーナー:前回の車検の時です。丁度2年前ですね。
いしてつ:あ…では、プラグ交換はいつされました?
オーナー:プラグって交換が必要なんですか?
いしてつ:おっと…圧縮は測りましたか?購入時は?
オーナー:よくわかりませんが、エンジンの調子は良いですよ。
いしてつ:…
この流れで圧縮を測ってみると、見たこと無いような低い数値。まぁ、エンジンをかけた瞬間、クランキングのときに怪しいとは思っていましたが、ここまでとは…この乗り方でエンジンのコンディションが良いとは思えませんよね。冗談ではなくこんなオーナー様が多いんです。そもそも、RX-8とRX-7はエンジンの構造自体が違うため、カーボンが溜まりやすく、熱量も高く、ブローしやすいエンジンなんです。それをこんな感覚で乗られたら…
出典:サンアイワークス
おさらいしますが、RX-8の人気の理由は
①スタイル・ビジュアル
②実用性
③価格帯
…ロータリーエンジンが入っていないのです!ここがすごく大きなポイントで、おそらく大半のオーナーはロータリーエンジンじゃなくても良いと思っていると思います。もちろんロータリーエンジン好きな方も多いので誤解を招いたら申し訳ないのですが…好きな方はメンテナンスも行き届いていて、車を見た瞬間にわかりますのでご安心を。とにかく、一般車の感覚で普通に乗られているオーナーが多いのです。中古車市場で出回っている車は殆どが複数オーナー車。ということは前オーナーが上記の3つを理由に車を購入していたら。そしてロータリーエンジンに対する知識と、意識が無かったら。そう、世の中にはそういったエンジンコンディションのRX-8が沢山出回っているということです。
RX-8は買って良いの?
まず知るべきはエンジンコンディション
この流れで来ると、中古のRX-8を買うのは危険すぎる気がしますよね?確かにリスクは大きいです。ただ、全ての車がダメなのではなく車両状態を見極める必要があるということです。一番重要なのはエンジンの圧縮です。まずは圧縮測定結果を開示している販売店を選ぶことが最重要ポイントです。ちなみに、私の勤めるGTNETでは平均7.0以下、前後左右ともに1.0以上数値が離れていないものを基準に、お客様に開示をした上で販売しています。しかし、前期型のRX-8の多くはこの限界値を下回っているケースが多いのです。
ではどういった車なら圧縮があるのか。私の経験上、後期型と前期型の一部の限定車などにコンディションの良い車両が見受けられます。後期型はメーカーが改良を重ねて大分改善が行われたため、そして前期型の限定車などはロータリーエンジンが好きで大切に乗られていた可能性が高いということが要因と思われます。実際に会話をしても、ロータリーエンジン乗りとしての回答がバッチリ返ってきます。しかし、残念なことにこれらの状況は前オーナーと顔を合わせることができる買取・下取のときだけ。オークションで仕入れてくるとなると、全くわからないため在庫として仕入れる販売店側にとても大きなリスクが発生します。これだけのリスクを背負って車両価格を20万円では販売できません。結果、GTNETではRX-8をほとんど扱わないというところにたどり着きました。私は基本的には仕入れませんね。
エンジン以外にもトラブルが
前期型の安価な車両のエンジンコンディションが良かったとします。これで安心して乗れる!と思ったら大間違い!!ロータリーエンジンの構造上、レシプロエンジンと比較して熱量が大きいのはご存知の通り。これが影響して様々なトラブルを招きます。代表的なものは以下の通りです。
①コイルのトラブル
②O2センサーの不良
③触媒内部の割れ
④ラジエター本体、及びホース類の劣化
⑤パワステのトラブル
上記は定番のトラブルでネットにも沢山トラブルの事例が挙がっています。今回は私の経験上のお話で⑤パワステトラブルについてです。あるお客様がEPS(電動パワーステアリング)警告灯が点灯してハンドルが重いだけではなく、右へ右へと勝手に切られていってしまう、という恐ろしい症状の相談がありました。走行中こんな状態になれば大事故になりかねません。早急に修理する必要がありました。
パワステトラブルはRX-8にはとても多く、我々も過去の経験を基に故障診断、改善のために様々なポイントを疑っていきます。アース不良が多いためアース部分の清掃・磨き・付け直し、その後はハーネスのカプラーの接触不良の見直し、これでも直らないのでパワステ本体の交換。それでも直らないので提携企業やディーラーにも相談し、ありとあらゆる手を尽くしましたがダメ。最終的にはディーラーに白旗を振られてしまいました。ディーラーでもお手上げとは…このお客様は今後どうすれば良いのでしょう?購入金額を考えると、今後かかる費用を考え、私は乗り換えを提案いたしました。車好きの私にとっても言いにくいことですが、お客様のことを考えればそれが最善なのかな、と。好きな車だから少しくらい手がかかる方が可愛い、というのはわかりますが、限度というものがありますよね。車自体を否定するつもりはありませんが、これだけのリスクがあるということを頭に入れておく必要があるということです。
RX-8の流通台数から見る相場
基本的に中古車はニーズがあるから価格が付くわけですが、こんな内容の車にニーズがあるの?と思い始めた方も多いはず。でもニーズがあるんです!カーセンサー カー・オブ・ザ・イヤーに輝くくらいですからニーズがあるのは事実。無ければ流通しない車でしょうね。笑 それでは中古車市場でどれくらいの台数が流通しているのでしょうか。
【RX-8】年間流通台数はこちら 月間流通台数はこちら
年間を通して常に550〜700台ほどの車両が掲載されています。この台数の変化に対して、オークション相場は大きく変動しません。安定して安いです。あとは時期や流通台数に応じて小売価格の変動はあるかと思います。特にユーザーの意識として見た目が大きく関わっているのは間違いありません。そのため、どんな時期でもエアロやアルミホイールなど見た目の部分に手が入っている車は比較的高めの価格帯で販売されているケースが多いです。もちろん、ロータリーエンジンということもあるので走行距離は大前提ですけどね。
2018現在 RX-8の小売相場
モデル | グレード | 小売相場 |
前期型(2003〜2008) | ベース | 25〜70万円 |
タイプS | 35〜70万円 | |
マツダスピードバージョン
マツダスピードバージョン2 |
100〜150万円 | |
後期型(2008〜20012) | ベース | 60〜120万円 |
タイプS | 80〜170万円 | |
タイプRS | 120〜200万円 | |
スピリットR | 200〜250万円 |
※修復歴無し 5〜8万km走行 MT車の価格帯
これらを見るとわかりますが、各グレードで幅が大きすぎますね。50〜80万円も幅があるということは、車両コンディションの差が大きいということ。特に前期と後期でこれだけ差が出るということは、いかに前期のRX-8にトラブルが多く、わかっている方は手を出さない=不人気車か、ということがわかります。しかしながらこの価格が魅力的と飛びついてしまう若者がいることも事実。見た目のかっこよさと値段に飛びついていませんか?あとで痛い目を見ても知りませんよ…
一応、私が考えるオススメ時期はこちらです。
購入時期:2019年2・3月
売却時期:〜2019年1月、4月〜
ただし、RX-7同様に日に日に良質車両が減っていくのであれば購入は早い方が良いです。コンディションの良い車両を見つけたらすぐに…いや、一呼吸おいて冷静になって買いましょう。
いしてつの思い
私は思うのです。近年、若者の車離れが進んでいる中で我々車を扱う企業としての責任とは何なのか。もちろん商売ですから日々の売上を上げなければならないのも事実。しかし、目先の欲に目がくらんだ商売をし、それを手にしたエンドユーザーが本当にカーライフを楽しむことができているのでしょうか?もしも、初めて乗った車がRX-8で、その車がトラブル続きで、ローンが残っているのに車を手放さなければならないことが起こったとしたら、その若者はまた車に乗りたい!と心から思えるのでしょか?本当に車を楽しむことができて、乗る楽しさだけでなく、所有すること、そしてカスタムすることの楽しさを得ることができて初めて次の車を購入するのだと思います。車に携わる我々はそんな立場にいるのであれば、RX-8の良さだけではなく、厳しさも伝えていく必要があるのだと思います。
厳しさについて知りたい方はいつでもご相談下さい。ケチョンケチョンにします。笑
スポーツカーのマフラーサウンド比較専門サイト EXhaust-note