2019年現在 BNR32 スカイラインGT-Rの相場について考える
2021/10/28
価格の高騰を続けるスカイラインGT-Rシリーズ。何故これほどの人気を保ち続けるのでしょうか。様々な角度から考えてみたいと思います。
目次
日本の誇るGT-Rシリーズの第二世代
1989年5月22日、8代目スカイライン発表。GT-Rを含む4WD車は8月発売とアナウンスされた。 1989年8月21日発売。型式はBNR32
先代KPGC110の生産終了より実に16年ぶりとなるGT-R復活であり、当時日産で行われていた901運動の集大成として開発されたR32型GT-Rは、ATTESA E-TS、Super HICASといった当時の最新デバイスに加え、エンジンに専用設計されたRB26DETTを搭載し、日産・フェアレディZ(Z32型)・インフィニティ・Q45(G50型)とともに、日本初の300PS車としてトリオで発売される予定であったが、当時の諸事情により実施された自動車馬力規制により、いずれも日本向けは280PSとされた。フェアレディZとインフィニティ・Q45は、海外輸出仕様は300PSであったが、GT-Rの輸出はなかった。
このRB26DETTの排気量は、2.6Lという当時としては“中途半端な”排気量設定がされている。これは当時グループA規格で行われていた日本のツーリングカーレースの最高峰、「全日本ツーリングカー選手権(JTC)」のレギュレーションに対応させたことが理由。なお、GT系標準モデルとの外見上の違いは、専用16インチアルミ鍛造ホイール、前後フェンダーの拡幅化、アルミ製フロントフェンダーおよびアルミボンネット採用、フロントグリルの追加、専用フロントバンパー、専用リアウィングが挙げられる。
引用:Wikipedia
先代ケンメリの販売終了から16年が経過し、待ちに待った復活となればGT-Rファンはもちろん、誰もがテンションMAXとなっていたのでしょう。ちなみに当時私は11歳。小学校時代ソフトボールに明け暮れてた私は、車はなんとなく好きでしたがそこまで詳しくないため、全く興奮もしておらず残念な少年でした。笑
そんな中、満を持して登場したR32 GT-Rは当時の最新デバイスをふんだんに盛り込まれ、RB26エンジンを搭載した4WDということがユーザーの心に響きます。しかし、ここで注目すべきはフェアレディZとインフィニティ・Q45のみ300PS車として海外輸出しようが設定され、スカイラインGT-Rのみ280PSの国内仕様。海外への輸出はなかったのです。これが後の中古車相場に大きく響くことになります。
R32 スカイラインGT-Rが与えた影響
スカイラインGT-Rと聞いて、やはり誰もが連想するであろうカルソニックスカイライン。1990年全日本ツーリングカー選手権(JTC)のレースデビュー戦では、決勝中レース1/4時点で全てのマシンを周回遅れとするなど実力の差を見せつけながらポール・トゥ・ウィン。その後、1993年まで無敗を守り29連勝という偉業を成し遂げました。また、その他のレースでも多くの実績を残しており、当時のレースはGT-Rを抜きには語れないものとなっています。
出典:HKSの歴史
そして、そのレースに魅せられたアフターパーツメーカー、ショップチューナー、走り屋達が挙ってGT-Rをチューニングしサーキットはもちろん、ストリートでも数々の記録…?伝説??を残してきました。それは記録だけでなく記憶に残ったのは言うまでもありません。日本国内はもちろん、海外でも話題となり常にチューニング界の中心的存在にいたことは間違いと言えます。
出典:MotorFan
R32 GT-Rの小売相場
それでは気になる現在の小売価格を調べてみたいと思います。GOOに掲載されている車両を検索してみました。
グレード | 年式(モデル) | 小売相場 | 新車価格 |
標準 | 1989年5月〜(前期) | 350〜440万円 | 445.0万円 |
1991年8月〜(中期) | 360〜530万円 | 451.0万円 | |
1993年2月〜(後期) | 300〜480万円 | 454.5万円 | |
Vスペック | 1993年2月〜 | 560万円 | 526.0万円 |
VスペックⅡ | 1994年2月〜 | 520〜550万円 | 529.0万円 |
※標準車・VスペックⅡ:5〜10万km 修復歴無し Vスペック:修復歴無し にて検索(全車ASK表記は除外)
まず言えることは、近年の標準車の販売価格は前期・中期・後期といったモデルの違いによる価格差がほとんどないということです。これは何を示しているかと言えば、年式やモデルではなく、ユーザーが車両の状態やメンテナンスを重視しているということがハッキリとわかります。そして、調べてみてわかったことは現在中古車市場でプライスを出しているVスペックは1台しか存在しないということ!まさかのVスペックⅡより圧倒的に少ないのです。こんなことを書くと、Vスペックに人気が集中したりして…笑 でもそれだけ少ない車両なので、価格もVスペックⅡと同等か、それ以上となっているわけです。また、全グレードにおいて、新車価格と同等、あるいはそれ以上の価格帯になっていることにも驚きです。前期モデルに関しては既に30年前の車です。さすがスカイラインGT-Rですね。
いつから価格の高騰が始まったの?
一般的には車の相場というのは経年で右肩下がり。しかし、新車発売開始後30年も経過しているのに新車価格を超える状況となっているのは何故なのか?R32 GT-Rがいつからこんなに高かったのかを調べてみることにしました。
一昔前は酷い扱い!?
ハッキリ申し上げます。今でこそこれだけチヤホヤされているR32 GT-Rですが、少し前はあまりにもボロい車が多く、エアコンが効かない、パワステが壊れている、時計が消えた、ダッシュボードが浮いている、エアコンルーバーがガタガタ…こんな車誰が乗るんじゃーい!といって、一時期のAE86やS13シルビアのような扱いをされていました。確かに新車登録から20年以上も経過して旧車の仲間入りを始めたため当然といえば当然の流れ。結果ユーザーニーズが無いため、驚きの低い価格帯で販売されていました。
アメリカの輸入規制25年ルールが大きく影響
このブログを読んでいる皆様はほとんどの方がご存知かと思いますが、アメリカでは中古車を輸入する際に大きなルールがあります。それは新車登録から25年が経過していなければいけないということ。これを避けるためには特別な申請をしたり、高額な税金が課せられたりと現実的ではないため一般的には25年を待って、いざ解禁!となるわけです。
思い出して下さい。R32 GT-RはフェアレディZやQ45と違い、国外への輸出を行っていなかったため、アメリカでは今か今かと待ち望んでいたユーザーが5万といるわけです。そんな猛者たちが解禁前後に日本に買い付けに来たというわけです。するとどうでしょう。オークション会場には海外のバイヤーが溢れかえり、応札が集中し高値で落札され、オークション相場が一気に高騰、小売相場にも即日影響が出始めたのです。この相場の高騰は誰にも止められることはできません。結果、新車価格を超えるほどの小売相場になってしまいました。
そこで過去の販売価格を調べてみました。ランダムに選んでいること、そしてあくまでも文字情報のため車両の状態や仕様など詳細はわかりかねますが、なんとなくのイメージは掴めそうです。参考までにご覧下さい。
年式 | 走行距離 | 修復歴(点数) | 車両価格 | |
2011 | 1990 | 13.4万km | 3.5 | 58万円 |
1994 | 9.2万km | R | 48万円 | |
1994 | 9.3万km | R | 93万円 | |
2012 | 1990 | 6.9万km | 4 | 98万円 |
1993 | 9.2万km | 4 | 68万円 | |
1994 | 5.6万km | 3.5 | 238万円(VスペⅡ) | |
2013 | 1989 | 8.0万km | 5 | 98万円 |
1992 | 4.0万km | 3.5 | 178万円 | |
1993 | 9.4万km | 4 | 108万円 | |
2014 | 1992 | 5.2万km | 4 | 168万円 |
1993 | 13.1万km | 4 | 68万円 | |
2015 | 1991 | 3.8万km | 4 | 228万円 |
1993 | 12.6万km | 3.5 | 138万円 | |
1993 | 8.2万km | 4 | 168万円 | |
1994 | 6.5万km | 4 | 248万円(VスペⅡ) | |
2016 | 1990 | 8.2万km | 3.5 | 158万円 |
1994 | 8.9万km | 3.5 | 248万円 | |
1994 | 11.8万km | R | 158万円 | |
2017 | 1989 | 4.7万km | 4.5 | 288万円 |
1994 | 9.9万km | R | 209万円 | |
1994 | 5.4万km | 3.5 | 299万円 | |
2018 | 1991 | 6.0万km | 4.5 | 438万円 |
1993 | 11.5万km | R | 288万円 | |
1994 | 9.2万km | 3.5 | 278万円 | |
1995 | 8.9万km | R | 308万円(Vスペ) |
2013〜2014年あたりで明らかに金額が上昇し始めていますね。やはり25年ルールが大きく影響を及ぼしていると考えられます。また、もう一つの理由として考えられることは、2011〜2012年までの100万円を切った車両を安く手に入れ、メンテナンスや補修に力を入れていったということが考えられます。実際に、このデータを調べる際に内容を見ていくと、普通に30万円くらいメンテナンスや補修にかけているユーザーが多かったので、この頃からR32好きのユーザーが車両を永く乗ることを考えた方向にシフトしていったのでしょう。
しかし、この価格の跳ね上がり方を見ると凄いですよね。6年前に68万円で購入できた車両が、今では4〜7倍近い価格帯で流通しているのです。このタイミングに手放してひと儲けしているユーザーが多数いるのは間違いありません。ある種の投資と言っても良いですね。
流通台数から見る相場と今後の動き
【R32 スカイラインGT-R】年間流通台数はこちら 月間流通台数はこちら
流通台数は2018年3月から比較すると40台ほど増加しているため、相場が下がりそうな感じはありますが、台数の増え始めた8月ころと比較しても、現状はそこまで変わっておらず、横ばい〜若干右肩上がりといった状態です。というのも、小売相場を調べた際に10万km以内、修復無しの車両は未だにタマ数が少ない状況でした。逆に言うと増加している40台は必ずしも良質車ばかりというわけではなく、質の悪いものも多数含まれているということ。良質車両はまだまだ取り合いが続いているということですね。
いよいよ25年ルールに全車適合
2019年になったため、最終モデルの1994年式(一部1995年もあり)まで25年ルールに適合となるため、今後R32 GT-Rは更に相場が高騰することが予想されます。特に最終モデルにはVスペックⅡがあったり、何より最終をワンオーナーで大切に保管していた、なんて方が世の中には沢山存在していますので、こういった車が市場に出て、オークションで超高額にて落札、アメリカへサヨナラ〜というストーリーが目に浮かびます。日本の宝が流出していってしまうのは非常に残念なのですが…この流れを止めることができないのも事実。しかし年始早々、為替が円高となり急激な相場の高騰は少し先になりそうな予感もしています。売却は一旦様子を見て、購入を先行する方が良さそうですね。
NISMO Heritage Partsの影響はいかに
極端に価格の高い車は状態が良い、というのは皆さんご存知ですが、具体的にどこを指すかご存知ですか?それは内装なんです。もちろん外装にもポイントはあって、先日紹介したPROSHOP SCREENのレストア車両のようにガラスモールや錆などの状態は注目される箇所です。しかし、外装に関してはそれ以外の場所は修理・修復が可能。言わば、どうにでもできてしまうというところがあるため、あまり重視されないポイントでした。逆に、内装部品は製造廃止になっている部品が多く、入手不可能なためとても注目されるポイントなのです。特にガレージ保管車両は、紫外線の影響を受けにくくシートの色褪せや、ダッシュボードの変形、ドア内張りの剥がれなどが起こりにくく、誰が見ても状態が良いというのは一目瞭然でした。
1989年にR32型が発売されてから30年近く経った今なお、多くの方を魅了してやまない第二世代のスカイラインGT-R。「末永く乗り続けたい」「楽しみ続けたい」「親子2代で乗り継ぎたい」というお客様の想いをサポートしたいと、製造廃止となっていた純正補修部品を再供給すべく復刻生産の取り組みを始めました。
既に当時の生産設備や原材料が無いという厳しい条件の中「これが無いと走れない」「車検に通らない」「メーカーでないと製造できない」といった重要な純正補修部品を優先し、サプライヤーの協力のもと調整を進めてまいりました。調整の結果、復刻生産を実現したハーネス、ホース・チューブ、エンブレム、外装部品などの再供給を2017年12月より開始しています。
なお、この「NISMOヘリテージ」活動は継続しており、R32、R33、R34型スカイラインGT-Rの復刻生産アイテムを拡大していく予定です。
また復刻生産が困難な純正補修部品については、リプレイス品やリビルト、オーバーホール、NISMOチューニングパーツの代用などのご提案を検討していく予定です。
2017年に入りNISMO Heritage Partsにより製造廃止となったパーツが復刻されていっており、現オーナーは嬉しい限りの状況となってきました。実際に復刻されている部品を見ると、エンブレムやステッカーといったものから、エンジンハーネスなど大物まで様々。現状は機能部品優先ですが復刻生産アイテムを拡大していく予定とのこと!要するに、お金をかければ状態の良い車両を本当の意味でレストアできるときが来るかもしれないのです。もしも、内装部品まで手がけてきたら…現在の「この車のダッシュの状態が良いんですよ」といった会話が全く通用しない日が来るかもしれません。
今購入するなら錆&修復歴無しの車両を
では、どういった車を購入すべきかなのですが、どれだけ復刻部品が製造されようが絶対に変わらない部分、それは錆と修復歴です。逆に言えばこの2つさえクリアしていれば状態の良い車両を制作することができる可能性があります。現在の流れから言えば、走行距離はそれほど重視されていません。キッチリと手が入っている方が評価が高い部分がありますので、10万kmオーバーで錆と修復歴の無い車両を手に入れて、少しずつレストアしていくのは良いかもしれません。錆と修復歴については以下を参考にして下さい。
中古車購入時のリスクとは:https://tempa.co.jp/buyer/risk
R32 スカイラインGT-Rは今買うべき?売るべき?
先にも書きましたが、全車25年ルール適用となるので、今後さらなる価格の高騰、及び車両の減少が予測されます。そうなると購入は早ければ早い方が良いでしょう。各々の予算もあると思いますが、比較的低予算で狙うのであれば修復歴・錆無しの13万kmくらいの車両を購入して、少しずつてなおし売却に関しては、為替の動きも気になるところ。そしてHeritagePartsの動き次第かな、と考えております。私なら4月以降の様子を見て、じっくり考えてみますね。
今年も毎週オークションに行く予定です。気になる方はお気軽にご相談下さい。